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中小企業向けの補助金や各種制度は、当然のことながら中小企業や小規模企業が利用することができます。中小企業の定義は法令で定めておりますので、ここでは自社が中小企業にあたるかどうかの確認方法を解説していきます。

まずは業種を確認した上で、資本金もしくは従業員数が定義を満たすか確認してください。

資本金もしくは従業員数のどちらか一方を満たせば中小企業の定義に該当します。

1、業種を確認する

業種の定義は、総務省がまとめている「日本標準産業分類」に準じます。自社がどの業種にあたるか確認する際は分類表をご確認ください。

複数の事業を行っている場合は、「利益や売上高などの最も大きい事業」がその企業の業種となります。

分類表https://www.soumu.go.jp/main_content/000890407.pdf
日本標準産業分類
(令和5年7月告示)
https://www.soumu.go.jp/toukei_toukatsu/index/seido/sangyo/R05index.htm
日本標準産業分類に関する
よくあるお問合せについて
https://www.soumu.go.jp/main_content/000819207.pdf

2、資本金と従業員数の確認

日本標準産業分類」で業種を確認したのち、「②中小企業の定義確認表」でどの業種に含まれるのか、「①含まれる業種確認表」で確認してください。その後、「②中小企業の定義確認表」で中小企業にあたるのか確認してください。

①含まれる業種確認表

製造業その他
下記以外の全て
卸売業大分類I(卸売業、小売業)のうち
  中分類50(各種商品卸売業)
  中分類51(繊維・衣服等卸売業)
  中分類52(飲食料品卸売業)
  中分類53(建築材料、鉱物・金属材料等卸売業)
  中分類54(機械器具卸売業)
  中分類55(その他の卸売業)
小売業大分類F(電気・ガス・熱供給・水道業)のうち
  細分類3313 電気小売業
  細分類3413 ガス小売業
大分類I(卸売業、小売業)のうち
  中分類56(各種商品小売業)
  中分類57(織物・衣服・身の回り品小売業)
  中分類58(飲食料品小売業)
  中分類59(機械器具小売業)
  中分類60(その他の小売業)
  中分類61(無店舗小売業)
大分類M(宿泊業、飲食サービス業)のうち
  中分類76(飲食店)
  中分類77(持ち帰り・配達飲食サービス業)
サービス業大分類G(情報通信業)のうち
  中分類38(放送業)
  中分類39(情報サービス業)
  小分類411(映像情報制作・配給業)
  小分類412(音声情報制作業)
  小分類415(広告制作業)
  小分類416(映像・音声・文字情報制作に附帯するサービス業)
大分類H(運輸業、郵便業)のうち
  細分類4892 レッカー・ロードサービス業
大分類K(不動産業、物品賃貸業)のうち
  小分類693(駐車場業)
  中分類70(物品賃貸業)
大分類L(学術研究、専門・技術サービス業)
大分類M(宿泊業、飲食サービス業)のうち
  中分類75(宿泊業)
大分類N(生活関連サービス業、娯楽業) ※ただし、小分類791(旅行業)は除く
大分類O(教育、学習支援業)
大分類P(医療、福祉)
大分類Q(複合サービス事業)
大分類R(サービス業<他に分類されないもの>)

②中小企業の定義確認表

業種中小企業者小規模企業者
資本金の額又は出資の総額常時使用する従業員の数常時使用する従業員の数
①製造業、建設業、運輸業
 その他業種②〜④を除く
3億円以下300人以下20人以下
②卸売業1億円以下100人以下5人以下
③サービス業5,000万円以下100人以下5人以下
④小売業5,000万円以下50人以下5人以下
中小企業の定義(中小企業庁)https://www.chusho.meti.go.jp/faq/faq/faq01_teigi.html#q1
含まれる業種の確認表https://www.chusho.meti.go.jp/soshiki/kaitei_14.pdf

例えば資本金1,000万、従業員数10人のラーメン店の場合

日本標準産業分類での業種の分類は、「大分類 M 宿泊業、飲食サービス業」→「中分類76 飲食店」→「762 専門料理店」→「7624 ラーメン店」です。「②含まれる業種確認表」では「小売業」にあたることが確認できます。

小売業は、「資本金の額又は出資の総額が5,000万円以下」「常時使用する従業員の数50人以下」という条件ですので、中小企業者に含まれていることが分かります。 

なお、「常時使用する従業員の数が5人以下」ではありませんので、小規模企業者にはあたらない、ということも確認することできます。

例えば資本金3.5億円、従業員数150人の金属熱処理業の場合

日本標準産業分類では「大分類 E 製造業」→「中分類24金属製品製造業」→「246金属被覆・彫刻業、熱処理業(ほうろう鉄器を除く)」→「2465 金属熱処理業」にあたります。「②含まれる業種確認表」では「製造業その他」にあたることが確認できます。

製造業は、「3億円以下」「300人以下」という条件ですので、資本金はあたりませんが、従業員数はあたります。どちらか一方を満たしていればよいため、この場合は中小企業者に含まれるということが分かります。

基本的に補助金や制度を利用できるのは、中小企業や小規模企業の定義に当てはまる場合ですが、補助金によっては、中小企業の定義を超えてしまっている企業が利用することのできる補助金もございます。

例えば、事業再構築補助金(2025年3月26日締切分)では、中堅企業も補助金の申請することが可能です。

1、中堅企業の定義 (事業再構築補助金での定義)

中堅企業の定義①中小企業以外
②資本金の額又は出資の総額が 10 億円未満の法人
③資本金の額又は出資の総額が定められていない場合は、従業員数(常勤)が 2,000人以下

2、その他組織

基本的に中小企業と中堅企業が対象ですが、次の組織は、補助金によっては申請が可能です。

生活衛生同業組合生活衛生同業小組合、生活衛生同業組合連合会
酒造組合、酒造組合連合会、酒造組合中央会、酒販組合、酒販組合連合会、酒販組合中央会
内航海運組合、内航海運組合連合会
技術研究組合

大企業はもちろん利用できませんが、みなし大企業にあたる場合、補助金や各種制度が利用ができないため注意が必要です。みなし大企業は次の条件に当てはまる事業者を指します。

①発行済株式の総数又は出資価格の総額の2分の1以上を同一の大企業が所有している中小企業者等
②発行済株式の総数又は出資価格の総額の3分の2以上を大企業が所有している中小企業者等
③大企業の役員又は職員を兼ねている者が役員総数の2分の1以上を占めている中小企業者等
④発行済株式の総数又は出資価格の総額を(1)~(3)に該当する中小企業者が所有している中小企業者等
⑤ ①~③に該当する中小企業者の役員又は職員を兼ねている者が役員総数の全てを占めている中小企業者等
⑥応募申請時点において、確定している(申告済みの)直近過去3年分の各年又は各事業年度の課税所得の年平均額が15億円を超える中小企業者等

自社が中小企業かどうか確認するのは、多少手間が掛かりますが、特に補助金を申請する際には不備での不採択になることや、トラブルを防止する意味で、事前に確認しておくことをオススメしております。

稀に「小規模企業者に当てはまると思って、補助率2/3で話を進めていたが、実は違い補助率1/2だった」というようなお話を聞いたりすることがあります。

どこに当てはまるか確認し、上手く中小企業向けの補助金や各種制度を使いこなしていって頂ければと思います。

投稿者プロフィール

尼崎 耕司
尼崎 耕司中小企業診断士・MBA(経営管理修士)
中小製造業、東証プライム上場オークション会社、産業振興系行政機関、人事組織コンサルティングファームを経験。法政大学にて経営管理修士(MBA)を取得後、中小企業診断士として独立開業。

東証プライム上場企業で研鑽したマーケティング戦略と施策実行、人事組織コンサルティングファームで培った人事組織領域を得意する。東証プライム上場企業にて事業企画を任されていた際は、3年間で営業利益を2倍(数億円規模)にまで伸ばすことに成功。

幹部研修、マネジメント研修、新入社員研修といった研修や人事制度構築、マーケティング戦略策定、実効性の高い現場施策から経営戦略レベルまでトータルした経営支援を行っている。

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