先日お問合せをいただきましたので、事業承継について考え方や大枠の流れを書こうと思います。

事業承継とは「現社長の終わりの戦略」です。それゆえ、事業承継だけではなく廃業も選択肢のひとつに入れて考えることが重要です。

まず、会社の価値を把握し、どの方法を取るか検討して下さい。親族承継や従業員承継を選択した場合は、事業を後継者へ受け渡すための下準備をしていきます。

■事業承継の大枠の流れ

企業の状況を把握する(企業価値、清算価値を把握する)

まず、会社の価値を知るために、企業価値の算出をすることが事業承継を行う上でのスタートになります。企業価値の算出方法は、インカムアプローチ、マーケットアプローチ、コストアプローチと言った方法があります(ここでは説明を省略します)。企業価値の算出は、税理士などの財務が得意な専門家に依頼するとよいでしょう。

この企業価値の算出以外にも、事業を清算(廃業)した際に、実際にどのくらい資産が残るのか把握することも大事です。

例えば、M&Aの話があったとしても、当然のことながら必ず話がまとまるわけではありません。金額が折り合わずに話が流れる場合も当然あります。金額交渉をする段階になった場合、事業を清算した際の価値を把握していれば、どこまで売却価格を下げてよいか念頭に置いて金額交渉をすることができます。

また、現在の企業価値以外にも、今後の自社や業界全体の売上状況の推移、営業利益の状況はどう推移していくかということも加味して考えてください。

売上や営業利益が将来的に減少することが見込まれ、資産が目減りする、負債が大きくなるような場合は、廃業も視野に入れて早めに行動した方がよいでしょう。

どの方法を取るか決める

企業の状況を把握した後に、どの方法を取るか考えます。どの方法を選択するかは、社長の価値観や信念、事業に掛ける思いなどをよく考えた上で選択してください。

 ①親族承継

 ②従業員承継

 ③社外承継(M&A)

 ④廃業

親族承継や従業員承継を検討している場合は、承継しようとしている方とお話しして下さい。この際、時間を掛け丁寧に話をすることが大切です。

事業承継すると喜ぶだろうと一方的に考えていても、必ずしも相手は会社を継ぎたいと考えているかどうかは分かりません。特に事業の状況がよいとは言えない場合は尚更です。

そのような思いで事業を行ってきたか、事業を残すとどのように社会に貢献できるのか、事業承継をすると後継者にどのようなメリットがあるかなど、丁寧にお話をするようにして下さい。

事業を受け渡すための下準備をする

親族承継、従業員承継をしていく場合、事業を引き継ぐために入念な準備が必要になります。

 ①後継者の育成

 ②事業の磨き上げ

 ③後継者が受け入れられる組織風土作り

後継者の育成には時間が掛かります。何年も前から事業承継の検討をし、後継者と話し、合意を取り、経営哲学や業務内容の引き継ぎなどを行い、後継者へスキルを受け渡して下さい。

事業の磨き上げとは、後継者に事業を引き継ぐ前に経営状況をより良くしていくことです。例えば、商品を改良する、新商品を作る、新しいプロモーション方法を構築する、社内組織体制を整える、業務効率化を図るなどといった経営に関するありとあらゆることです。後継者と一緒になって取り組めば、後継者の育成にもなり、また行った施策の成果が出れば、既存の従業員も後継者を受け入れやすくなります。

後継者が受け入れられやすい組織風土を作ることも重要です。全ての従業員がすんなりと後継者のことを受け入れてもらえれば非常に楽なのですが、後継者とベテラン社員との間に軋轢が発生するケースは間々あります。じっくり腰を据えて、話をし、どこに不満を持っているか把握し、それを改善するべく丁寧に対応していく必要があります。

事業承継は長期的なチーム戦です

中小企業庁が公表した「事業承継ガイドライン」では、事業承継に必要な期間は後継者の育成も含めて5〜10年ほど掛かるとしています。

また、事業承継には、事業譲渡や分割といった会社法、株式譲渡など法律に関わることも多く絡んでくるため一丁縄ではいきません。法律のことは弁護士、企業価値算出は税理士、経営全般に関することは中小企業診断士など多くの専門家の力が必要になってきます。

もちろん天照経営研究所でも、事業承継に関するご相談も受け付けております。より良い終わりの戦略を実現するために、御社と一緒になって考えられれば幸いです。

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